なぜ大学の卒業式では角帽をかぶるのか?

ニュース記事

web版National Geographicに面白い記事が載っていました。

Why do graduates wear those square hats?

National Geographicsより引用

 

まずは気になる表現を見ていきましょう。

In the name of social distancing, this year’s graduation ceremonies have deviated from the norm. Students of all ages are attending commencements from their couches and accepting virtual diplomas over Zoom meeting screens.

「ソーシャルディスタンシングの名のもと、今年の卒業式は通常とは大きく異なっています。あらゆる年齢の生徒・学生がカウチソファから卒業式に出席し、オンライン会議のスクリーン越しにヴァーチャルの卒業証書を受け取っています。」

“in the name of…”とは「~という名のもと」という意味です。私はU2の有名な曲、”Pride (In the Name of Love)”で覚えました。

“commencement”という単語は見慣れないかもしれませんが、実はこれがアメリカでは「卒業証書授与式」です。この単語にはもう一つ意味があり、それは「始まり」です。新たに人生が始まるというところから卒業式に”commencement”を当てたのでしょうが、巧いですね。他の国では普通に”graduation ceremony”です。

 

 

European scholars have been wearing caps since the first universities were established in the 11th century, but their early caps looked more like Amelia Earhart’s pilot cap than the square caps we know today.

「昔のヨーロッパの学者はAmelia Earhartのパイロットキャップのようなものをかぶっていました。」Amelia Earhartって誰?ググりました。女性として初の大西洋単独横断飛行を成功させたアメリカ人女性だそうです。その帽子はこのようなものです。

[画像はamazonからで、パイロットになりきっているスヌーピーの被り物です。]
もちろんゴーグルは付いてなかったでしょうが、それでも角帽とは全然違いますね。

 

 

記事を順に引用しながら説明すると英語の勉強にもなるのでしょうが、このままだとすべて引用することになりかねませんので、ここから先はコンパクトにまとめます。引用元を読んでからこの先を読んでください。

昔の丸い帽子はpileusと呼ばれ聖職者によって身につけられていました。14世紀に入ると、その帽子が少し背が高くなりpileus rotundusと呼ばれ、法学、医学、科学を勉強する大学生がかぶっていました。16世紀中頃までにはpileus quadratusという角帽が現れ、それが徐々に取って代わり、アメリカもイギリスの真似をしてアカデミックな服装を取り入れたため角帽がスタンダードとなったようです。

 

 

Today, American graduates in law, medicine, and philosophy still wear rounded caps, but undergraduates have firmly claimed the square cap—often called a mortarboard since they resemble the square tray bricklayers use when applying mortar.

角帽は”mortarboard”「モルタル板」と呼ばれています。左官が用いるコテ板のことです。

[画像はamazonからです。]

 

 

Roughly 100 years ago, students began moving their tassel from the right side of their cap to the left after they were conferred.

「約100年前、学生は卒業証書を授与されると飾り房を右から左へ動かし始めました。」
“tassel”とは角帽に付いている飾り房のことです。現在では公式な決まりはないですが、やはり動かすようです。

 

 

…in 1912 the graduating class at the U.S. Naval Academy tossed their midshipmen hats after they were given new officer caps during the ceremony. Since then, the tradition of tossing graduation caps has caught on—even for graduates without a handy replacement.

よくドラマや映画の卒業式で帽子を投げるシーンを見ますが、これは1912年のアメリカ海軍学校が始まりだったんですね。

 

 

明治維新を経て日本で学制や大学を設置するに当たり、欧米、特にアメリカを参考にしたはずなのですが、日本では角帽はあまり見られませんね。私の母校の関西学院大学もアメリカ人宣教師ランバスさんが設立者の一人なのですが、角帽をかぶるという習慣はありませんでした(教授の先生方はかぶっていたかもしれませんが忘れました)。

 

角帽の歴史をたどると大元は丸い帽子で、現在の角帽はmortarboardと呼ばれているという面白い事実を知ることができました。

 

Top Photo by Jenny Erickson from FreeImages

Comments