The Booker Prize 2021 Longlist発表

発表からすでに2週間近く経っていますが、今日はこの話題を取り上げます。

まずThe Booker Prize(ブッカー賞)についてですが、これはイギリスの文学賞です。

The Booker Prize awards any work of long form fiction originally written in English and published in the UK and Ireland in the year of the prize, regardless of the nationality of their author. The work of long form fiction must be an original work in English (not a translation) and published by a registered UK or Irish imprint; self-published works of long form fiction are not eligible.

上記はThe Booker PrizeウェブサイトFAQに書かれてあります。著者の国籍は問わず、元々英語で書かれてあり、イギリスとアイルランドで発行された長編小説が対象です。

全部は読んでいませんが、読んだ限り受賞作に外れはありません。

今回はLonglistの発表ですが、このリストに含まれているものが候補作品になります。9月にShortlist(最終候補作)が発表され、11月に今年の受賞作が決まります。

今年のLonglistにはKazuo IshiguroのKlara and the Sunが入っています。

発売後すぐに読んだのですが、期待していたほどではなかったというのが正直な感想です。AIの備わったアンドロイドが主人公ですが、何故その行動というのが多く、リアルさを感じることが出来なかったのが一因です。ただ情景描写(特に納屋の夕景)と予想を裏切る後半の展開は作者の巧みさを感じられました。【評価★★★☆☆】

この作品のレビューを読んでいると数人の批評家がIan McEwan(1998年のThe Booker Prize受賞者)のMachines Like Me(2019年)と比較していたので、Klara and the Sunの読了後に読んでみました。

こちらはアンドロイドを観察する側が主人公です。パラレルワールドですがリアリティがあり、アンドロイドと人間が構築していく関係性を違和感なく表現していて、個人的にはこちらの方が面白かったです。【評価★★★★☆】

Longlistに戻りましょう。

好きな作家の一人であるRichard PowersのBewildermentという作品が候補作に入っていたので読もうとしたのですが、まだ発売されていませんでした。

一般の書店まだ並んでいない作品も候補作にするのですね。

候補作はどれも今年発刊されたばかりの新作なのでないだろうなぁと思いながらもAmazonの読み放題サービスであるKindle Unlimitedに入っている作品を探してみました。

そうするとKaren JenningsのAn Islandが入っていました。早速ダウンロードして読みます。

長編というよりは中編作品ですぐに読み終えました。他に誰もいない小さな島で灯台守をしている老人が主人公で4日間の出来事を追っているのですが、その男の目を通して植民地時代から独立を経て独裁者が倒されて今に至るまでの国の歴史を見るので時間軸は2つあります。回想を通してその老人の人間性がどう形成されたのかを知ることができ、4日間の行動も理解が進みます。それらがすべて積み重なって結末につながるのですが、植民地支配や独立運動など現代日本人には遠い世界の事柄を、歴史の脇役に過ぎない一般人を通して描いているのが興味深く面白く読めました。【評価★★★★☆】

9月のShortlistを楽しみに待ちましょう。

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