Word of the Year 2022いろいろ

ニュース記事

いろいろな辞書サイトからWord of the Year 2022が出揃いました。

まずはOEDを出版しているOxfordです。こちらは「goblin mode」です。今年のWord of the Yearはこれまでと違い一般の人による投票で決定されました。その時の候補が他に「metaverse」と「#IStandWith」でした。これらは聞いたり目にしたりしたことがありましたが、goblin modeはこの候補で初めて知りました。ですのでこれが選ばれた際には意外でした。

‘Goblin mode’ – a slang term, often used in the expressions ‘in goblin mode’ or ‘to go goblin mode’ – is ‘a type of behaviour which is unapologetically self-indulgent, lazy, slovenly, or greedy, typically in a way that rejects social norms or expectations.’

上記がOxfordによるgoblin modeの定義となります。「通常、社会的規範や期待を拒否する風に、悪びれずに好き放題、ダラダラして、だらしない、もしくは貪欲であるたぐいの行動」だそうです。ネットスラングで、PC Gamerという雑誌がこれに投票するようキャンペーンを仕掛けたそうで、その影響もあって選ばれたのでしょう。ちなみにgoblinとは緑色をした人間ほどの大きさの小悪魔で、ゲームでは雑魚モンスターとなっていることが多いです。

同じイギリスの辞書であるCambridge DictionaryのWord of the Yearは「homer」です。こちらも?となったのですが、私も一時期ハマっていたWordleの影響だそうです。Cambridge Dictionaryは調べられた回数でWord of the Yearを選出していて、homerはたった1日で65,000回以上調べられたようです。Wordleは当初個人運営のサイトが提供していましたが、今はNew York Timesによって運営されています。使用単語はアメリカ英語です。そのためイギリス人はhomerがWordleの答えとなった際に意味がわからずに調べたようです。意味は「ホームラン」です。イギリスには野球の文化がないのでわからなかったのでしょう。

他によく調べられた単語は「humor」,「 caulk」, 「tacit」, 「bayou」です。homorは綴りが違うため確認されたようです(イギリス英語はhumour)。それぞれの意味は「ユーモア」、「コーキングする(穴、隙間、亀裂を塞ぐ。浴室のバスタブと壁との間を塞いでいるあれです。)」、「暗黙の」、「アメリカ南部の水の流れがない湿地帯」です。Wordleで出題されてもbayouなんて絶対わかりません笑。

アメリカの辞書サイトのWord of the Yearを見ていきましょう。

Merriam-Websterは「gaslighting」を選出しました。こちらも個人的には聞き慣れない単語でした。これは映画『ガス燈』からきている言葉です。次のように定義されています。

psychological manipulation of a person usually over an extended period of time that causes the victim to question the validity of their own thoughts, perception of reality, or memories and typically leads to confusion, loss of confidence and self-esteem, uncertainty of one’s emotional or mental stability, and a dependency on the perpetrator

「通常長期間にわたる人の心理的操作のことであり、被害者に自身の思考、現実の知覚、記憶に疑義を抱かせ、混乱、自信や自尊心の喪失、感情的精神的安定性の揺らぎ、加害者への依存へと至らせること」とあります。

ただ最近ではこちらの意味での使用が多いようです。

the act or practice of grossly misleading someone, especially for a personal advantage

「誰かを、特に個人的な利点のためにひどく判断を誤らせる(ミスリードする)行動や習慣」という意味で使用し、deep fakeやfake newsといった用語に近いようです。Merriam-WebsterのWord of the Year 2022のページには2022年に使用された例が掲載されています。

他には「Oligarch」、「Omicron」、「Codify」、「LGBTQIA」、「Sentient」、「Loamy」、「Raid」、「Queen Consort」が数多く調べられています。それぞれ「オリガルヒ(ロシアの新興財閥)」、「オミクロン(ギリシャ語のアルファベットの15番目の字)」、「成文化する」、「Lesbian(女性の同性愛者)Gay(男性の同性愛者)Bisexual(両性愛者)Transgender(身体の性と性自認が一致しない者)Queer/Questioning(性自認がよくわからない、決めていない者)Intersex(男性女性両方の身体的特徴を持つ者)Asexual/Aromantic/Agender(無性愛者)の各頭文字を取った性の多様性を表す言葉」、「意識のある」、「ローム質の」、「急襲」、「(国王の妻としての)王妃」です。上記のMerriam-Websterのページに各言葉が使用された経緯が解説されていますので興味のある方はご一読を。

もうひとつアメリカの辞書から見てみましょう。デジタル辞書のDictionary.comのWord of the Year 2022は「woman」です。3月に1,400%増で検索されています。その理由を引用します。

The biggest search spike started at the end of March, during a confirmation hearing for Judge Ketanji Brown Jackson, who in April became the first Black woman to be confirmed as a US Supreme Court justice. Specifically, the surge in lookups came after she was asked by Senator Marsha Blackburn to provide a definition for the word woman.

アメリカの最高裁判事として初の黒人女性として就任したケタンジ・ブラウン・ジャクソンに対して上院議員のマーシャ・ブラックバーンが女性の定義を尋ねたことで検索されたようです。

ショートリスト(最終候補一覧)には、「🇺🇦」、「inflation」、「quiet quitting」、「democracy」、「Wordle」が入っています。それぞれ「ウクライナ国旗の絵文字」、「インフレ」、「最低限の仕事しかしない状態(直訳は『静かな退職』)」、「民主主義」、「Wordle」です。

4つの辞書サイトのWord of the Year 2022を見てきましたが、正直これというのがないというのが今年の感想です。どれも決め手に欠く言葉で、2022年を表しているとは言い難いのではないでしょうか。

私のWord of the Yearは「Yen」ですね。動きすぎです。

Comments