タイタニック号の無線通信

いろいろ

今日(2021年5月14日)、映画『タイタニック』の後編が地上波で放送されます。

氷山にぶつかり沈んでいくシーンが流されますが、その間の緊迫した様子をタイタニック号がやりとりした無線でうかがい知ることができます。

2年前の夏に北アイルランドのベルファスト(Belfast)にあるTitanic Belfastというタイタニック号の博物館を訪れました。そこではタイタニック号の構造、建造の仕方、船内の様子、救命ボート、乗員、沈んだ後の残骸等を模型、CGI、ビデオ、当時の新聞記事やポスターなどを用いて詳細に紹介しています。見所の多い展示内容で、非常に満足度の高い博物館です。

その展示内容の一つに無線の内容とイラストでタイタニック号が氷山にぶつかり沈んでいく様子を表しているものがあります。緊迫感が伝わってくる展示だったので、とても印象に残っています。TV放送前にこの無線の内容を追っておくとTV放送が楽しめるのではないでしょうか。(放送後でもいいかもしれませんが。)

見ていきましょう。

Time 1.40PM Date 14 APRIL 1912

CAPTAIN SMITH, TITANIC. HAVE HAD MODERATE VARIABLE WINDS AND CLEAR FINE WEATHER SINCE LEAVING. GREEK STEAMER ATHINAI REPORTS PASSING ICEBERGS AND LARGE QUANTITY OF FIELD ICE TODAY.

Baltic to Titanic

バルチック号(Baltic)からタイタニック号に送られた無線です。当時の無線はモールス信号ですので通信士が文字に変換していました。この時すでに氷山(iceberg)について触れられています。

Time 9.30PM Date 14 APRIL 1912

ICE REPORT: SAW MUCH HEAVY PACK ICE AND GREAT NUMBER OF LARGE ICEBERGS, ALSO FIELD ICE. WEATHER GOOD, CLEAR.

Mesaba TO Titanic and All Eastbound Ships

Mesabaも船です。氷山が多いと報告しています。

Time 9.35PM Date 14 APRIL 1912

RECEIVED, THANKS.

Titanic to Mesaba

タイタニック号が無線をきちんと傍受できていることがわかります。

Time 11.00PM Date 14 APRIL 1912

WE ARE STOPPED AND SURROUNDED BY ICE.

Californian to Titanic

タイタニック号に一番近かったカリフォルニアン号が氷に囲まれて停船していると連絡してきました。

Time 11.10PM Date 14 APRIL 1912

KEEP OUT! SHUT UP! I AM WORKING CAPE RACE.

Titanic to Californian

これが有名な台詞(?)となっています。Cape Raceとはニューファンドランド島にあるレース岬のことで、当時そこには無線基地があり、その周辺を航行する船とニューヨークとの間の中継基地となっていました。タイタニック号の通信士は乗客の電報を送受信していた(I AM WORKING CAPE RACE.)ので、カリフォルニアン号の通信士に対して、入ってくるな、邪魔をするな(KEEP OUT! SHUT UP!)と伝えたのです。

Urban Dictionaryによると”working Cape Race“はイディオムとなっています。
“Used to describe someone who is too preoccupied with the task at hand to notice potential obstacles and hazards.”
「目の前の仕事に夢中になるあまり潜在的な障害や危険に気づくことができない人を表すのに用いられる」と定義しています。ただ一般的な辞書サイトには登録されていませんので、どれだけの人がわかるのかは不明です。

このつれない返信をもらったカリフォルニアン号の通信士はふてくされて無線のスイッチをオフにしてしまいます。そのためにこの後のタイタニック号からの救難信号を受信できませんでした。

Time 12 .15AM Date 15 APRIL 1912

CQD THIS IS TITANIC. CQD THIS IS TITANIC. CQD THIS IS TITANIC. CQD THIS IS TITANIC. CQD THIS IS TITANIC. CQD THIS IS TITANIC.

Titanic to All Ships

CQDとは救難信号です。CQがseek you、Dがdistressもしくはdangerを表しているという話もありますが、後付けのようです。特に意味はないというのが通説です。

Time 12.25AM Date 15 APRIL 1912

COME AT ONCE … WE HAVE STRUCK A BERG. IT’S A CQD, OM.

Titanic to Carpathia

Carpathiaはカルパチア号で、この後タイタニック号の生存者を救助する重要な役割を果たします。at onceは「すぐに」というイディオムです。無線の最後のOMはOld Manの略ですが、老人という意味ではなく単なる呼びかけの表現です。

SHALL I TELL MY CAPTAIN? DO YOU REQUIRE ASSISTANCE?

Carpathia to Titanic

事の重大さを確認しています。

YES. COME QUICK!

Titanic to Carpathia

メッセージが短いので急を要する様子が伝わってきます。

Time 12.34AM Date 15 APRIL 1912

WHAT IS THE MATTER WITH YOU?

Frankfurt to Titanic

フランクル号の登場です。WHAT IS THE MATTER WITH YOU?は英語学習者なら一度は耳にしたことがある表現でしょう。最近は中学英語にも出てきます。「どうしたんですか」という決まり文句です。

WE HAVE STRUCK AN ICEBERG AND SINKING. PLEASE TELL CAPTAIN TO COME.

Titanic to Frankfurt

ここで初めてSINKINGという表現が出てきました。sinkは「沈む」という意味です。

OK. WILL TELL THE BRIDGE RIGHT AWAY.

Frankfurt to Titanic

BRIDGEは「橋」ではなく船の指揮を執る場所「船橋」です。日本語でもブリッジと言う方が一般的ですね。RIGHT AWAYは「すぐに」という意味です。

Time 12.45AM Date 15 APRIL 1912

SOS.

Titanic to Olympic

ここでSOSが使われています。当時は通信会社によって救難信号が異なっていました。通信士は事の重大性を理解していなくて、いい機会だからとSOSも使ってみただけのようです。SOSにも”Save Our Souls”という意味が後付けされています。

Time 1.00AM Date 15 APRIL 1912

WE HAVE STRUCK AN ICEBERG.

Titanic to Olympic

Time 1.10AM Date 15 APRIL 1912

SINKING HEAD DOWN. COME SOON AS POSSIBLE.

Titanic to Olympic

文法的にはcome as soon as possibleが正しいのでしょうが、省略されても意味はわかりますね。

CAPTAIN SAYS – GET YOUR BOATS READY. WHAT IS YOUR POSITION?

Olympic to Titanic

このgetは第5文型で使用されています。get(V)+your boat(O)+ready(C)となっています。get+O+Cは「OをC(の状態)にする」です。「そちらの(救命)ボートを準備している」です。

Time 1.25AM Date 15 APRIL 1912

ARE YOU STEERING SOUTHERLY TO MEET US?

Olympic to Titanic

steerは「舵を取る」、southerlyは「南に」です。オリンピック号はまだ状況がわかっていません。

Time 1.27AM Date 15 APRIL 1912

WE ARE PUTTING THE WOMEN OFF IN BOATS.

Titanic to Olympic

Time 1.30AM Date 15 APRIL 1912

CANNOT LAST MUCH LONGER.

Titanic to Olympic

中学校までは教科書に出て来る意味だけで単語を覚えていたら大丈夫ですが、高校英語以上ではそうはいかなくなるという例の一つがlastです。「最後の」という意味ではなく、「保つ」という動詞で使われています。not…muchはいわゆる部分否定で「たくさん~ない」ではなく「あまり~ない」です。「もうあまり保たない」というメッセージです。

Time 1.20AM Dale 15 APRIL 1912

GET YOUR BOATS READY. GOING DOWN FAST BY THE HEAD.

Titanic to Frankfurt

「急激に船首が沈んでいる」

Time 1.35AM Date 15 APRIL 1912

ENGINE ROOM GETTING FLOODED.

Titanic, picked up by Baltic

本来ならThe engine room is getting flooded.なのでしょうが、無線なので冠詞やbe動詞は省略されています。floodは名詞なら「洪水」、他動詞なら「~を水浸しにする」です。get flooded(p.p.)で「浸水する」となります。メッセージは「エンジンルームが浸水している」です。

Time 1.37AM Date 15 APRIL 1912

WE ARE RUSHING TO YOU.

Baltic to Titanic

Time 1.40AM Date 15 APRIL 1912

AM LIGHTING UP ALL POSSIBLE BOILERS AS FAST CAN.

Baltic to Titanic

「可能な限りボイラーを沸かしている」つまり「急いでいる」ということです。

Time 1.40AM Date 15 APRIL 1912

WE ARE COMING. YOU ARE ONLY FIFTY MILES AWAY. HOPE YOU ARE SAFE. I AM.

Birma to Titanic

ビルマ号も救助に向かいます。

Time 1.40AM Date 15 APRIL 1912

PLEASE TELL YOUR CAPTAIN THIS:

THE OLYMPIC IS MAKING ALL SPEED FOR TITANIC. YOU ARE MUCH NEARER TO TITANIC.

TITANIC IS ALREADY PUTTING WOMEN OFF IN THE BOATS, AND HE SAYS THE WEATHER THERE IS CALM AND CLEAR.

THE OLYMPIC IS THE ONLY SHIP WE HAVE HEARD SAY, “GOING TO THE ASSISTANCE OF TITANIC”. THE OTHERS MUST BE A LONG WAY FROM TITANIC’

Cape Race to Virginian

レース岬の無線基地がバージニアン号に救援の指示を出します。

Time 1.45AM Date 15 APRIL 1912

COME AS QUICKLY AS POSSIBLE OLD MAN: THE ENGINE ROOM IS FILLING UP TO THE BOILERS.

Titanic to Carpathia

きちんとas…as possibleが使われています。エンジンルームのボイラーまで浸水してきています。

Time 1.55AM Date 15 APRIL 1912

WE HAVE NOT HEARD TITANIC FOR ABOUT HALF AN HOUR. HIS POWER MAY BE GONE.

Virginian to Cape Race

be goneは「なくなる」です。

Time 2.10 AM Date 15 APRIL 1912

V V

Titanic

これが何を表しているのかはわかっていません。

Time 2.17 AM Date 15 APRIL 1912

CQ

Titanic

これが最後のメッセージとなりましたが、はっきりとは聞き取れなかったようです。実際のやりとりだけあって緊張感が伝わってきます。

以上はTitanic Belfastの展示とGreat ShipsというサイトのTitanic Wireless Distress Messages Sent and Received April 14-15, 1912、下記のBBCの番組を参考に作成しました。Great Shipsには上記以外の船とのやりとりや船の位置まで記した無線のメッセージが載せられていますので興味のある方は訪れてみてください。

BBCはTitanic – In Her Own Wordsというモールス信号のやりとりを音声に変換した番組を製作しています。わかりやすい英語ですので聴いてみてください。その番組を紹介している記事が
Titanic: The final messages from a stricken shipです。

Comments