イギリス議会でよく使われる英語

イギリス

【2019年10月30日追記】イギリス議会総選挙に至るまでの動画を『イギリス議会12月総選挙へ』に載せました。


【2019年9月5日追記】イギリス議会でジョンソン首相が提案していた10月15日総選挙案が否決された動画を下に追加しました。


ここ最近毎日イギリス議会の様子がテレビで流されています。もちろんBREXIT(ブレグジット)関連です。

3月12日にMay’s Deal(メイ首相がEUとまとめた離脱協定案)が否決され、13日にNo Deal(合意なき離脱)が否決され、14日にExtension(離脱延期)が可決されました。いずれも下院議会の議長が賛成と反対の数を述べてから可決か否決かを言っているのですが、その際の英語が独特なので少し見てみましょう。

BREXCRUCIATING! MPs vote to DELAY Brexit giving desperate Theresa May another three months to land deal

イギリスのタブロイド紙『The Sun』のサイトからです。タイトルの”BREXCRUCIATING”はBrexitとexcruciating(<状況が>ひどい)を合わせた造語です。MPsはMember of Paliaments(議員)の略です。

最初に流れる動画が14日の下院の可決の様子です。

【追記】
上のリンクは別タグで開いて下のtranscripを追いながら見ることができませんので、UK ParliamentのYouTube動画を追加しました。


【追記ここまで】

以下transcriptです。
Order. Order.

The ayes to the right 412. The noes to the left 202.

The ayes to the right 412. The noes to the left 202. So the ayes have it. The ayes have it. Unlock.

なんとなくはわかるでしょうが一つずつ確認していきます。

議長が最初に言っている”Order.”は「静粛に」の意です。

ayesはayeの複数形で、yesの意味です。noesはnoの複数形です。

to the right、to the leftはイギリス議会における投票ではlobby(投票者控え廊下)が二つあり、投票する際に右側を通ると賛成、左側だと反対を投じることになります。ですので”the ayes to the right”が「賛成票」、”the noes to the left”が「反対票」という意味です。

Soはよくある接続詞ですね。”the ayes have it”は「賛成多数により可決」です。”the noes have it”だと「反対多数により否決」です。

Unlockは「議場開放」くらいでしょうか。投票する際に鍵をかけるそうです。ですので採決後に鍵をアンロックするわけです。

今度ニュースでイギリス議会の採決の様子を見ることがあれば、これらのことを意識して聴いてみてください。意識して聴くことでリスニング力アップに繋がりますし、わからない単語等があれば調べることで自分の知識も増えるはずです。これを習慣化すれば英語力アップ間違いなしです。




こちらは現地時間9月4日にジョンソン首相の総選挙案が否決された時の動画です。

The ayes to the right 298. The noes to the left 56. So the ayes have it.

あれ、賛成が反対を大きく上回っていますね。賛成多数とも言ってます。総選挙か?と思うかもしれませんが、その後次の台詞が続きます。

But the House will be aware that the motion has not obtained the majority required under the Fixed-Term Parliaments Act 2011.

“the Fixed-Term Parliaments Act 2011″では議員の任期が5年と定められていて、早期の総選挙を実施するには3分の2以上の賛成が必要とあります(www.parliament.ukのFixed-term Parliaments Act 2011より)。従って、否決となったわけです。

ところで投票数を聞いて不思議に思いませんか?随分と少ないですね。これは棄権した人が多かったからです。288人が棄権したようです。

ちなみにイギリス議会の庶民院(the House of Commons: 下院に相当)の定員は650人です。しかし賛成298+反対56+棄権288=642人です。これは議長、副議長等(the Speaker, three deputies, four tellers)が入っていないからです。

それにしてもBREXITどうなるんでしょう。


ついでにこちらも英語の勉強に便利なので紹介しておきます。

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Comments

  1. ゆぅ より:

    TVのニュースを見るたび、議長の色々な声色の「Order~Oo~rder~」が気になっていました。
    少しでも何を言っているかがわかると、途端に楽しくなりますね。
    ほとんど理解できませんが、盛り上がっている雰囲気や、言葉が心地よくて、
    YouTubeで下院のライブがある日が楽しみでなりません。
    解説ありがとうございます。

    • tomoki より:

      ゆぅさん、コメントありがとうございます。
      おっしゃる通り議長のOrderは特徴的ですよね。
      YouTubeの字幕機能をオンにすれば勉強になりますのでお試しください。

  2. ゆぅ より:

    tomokiさん

    YouTubeの字幕機能のことは、知りませんでした。
    今まで聞き取れない部分が大半だったので、こちらを活用していきたいと思います。
    文字で確認できることにワクワクしています。
    ありがとうございました。

  3. フヂコ より:

    Tomoki 様

    最後のunlock が不思議でしたが、Tomoki 様の解説でようやくわけがわかりました。どうもありがとうございました!
    また色々解説してください!

    フヂコ

    • tomoki より:

      フヂコさん、コメントありがとうございます。これからも英語により一層興味を持てるような解説を心掛けていきます。

  4. […] 賛成が過半数を取っているのですが、以前『イギリス議会でよく使われる英語』でも解説したように2/3以上の賛成に足りていませんので、否決されています。 […]